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住友建機株式会社

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住友建機は、油圧ショベルの塗装工程における「塗装検査システム」をライトウェルとともに開発しました。「塗装検査システム」開発の経緯と効果について、齋藤佑一氏(グローバル製造本部 製造部 技術課)、渡邉芳輝氏(情報システム部 情報システムグループ グループリーダー 兼 管理本部 環境管理推進室 主査)、伊達昌宏氏(情報システム部 情報システムグループ 主査)にお話を伺いました。

 

 

 

もくじ

1.塗装検査を電子化し、品質を高めるための戦略を立てたい
2.タブレットを活用した検査システムの実績でライトウェルに依頼
3.基幹システムと連動した検査記録システムの一環として開発
4.検査をデータ化することで、時間・コスト削減につながる
5.次工程のシステム化と外観検査システムとしての発展性に期待

塗装検査を電子化し、品質を高めるための戦略を立てたい

− 住友建機が「塗装検査システム」を導入された背景について教えてください。

住友建機は油圧ショベル、道路機械などの開発・製造を行う建設機械メーカーです。建設機械で初めての「省エネ大賞」(経済産業省主催)受賞、さらに「優秀省エネルギー機器表彰会長賞」(日本機械工業連合会主催)の受賞、「グッドデザイン賞」(日本デザイン振興会)など、その高い経済性能と技術は広く世界で認められています。

世界各地で普及すると同時に、経済性能だけでなく、外観、塗装に関するお客様の要求もまた高まってきました。もっとピカピカの油圧ショベルが欲しい、塗装品質をもっと高めて欲しい、といった声が届くようになったのです。

私たちはその声にお応えし、品質を高めていくためにどんな施策を取っていけばいいのか検討を始めました。
ところが蓄積されているデータが少なく、今後の施策を検討するには十分ではありませんでした。

 

 

− どのようなやり方で塗装検査を実施しているのですか

現在は、紙に線画で油圧ショベルが描いてあるチェックシートを使用して塗装検査を行っています。人が塗装状態を検査・確認して、チェックシートに不良箇所と不良内容を手書きで記入しています。 その検査済チェックシートを元に、次工程で塗装手直し者が塗装手直し作業を行い、再度チェックシートをもとに不良箇所の塗装手直しが済んでいるかを検査・確認します。 チェックシートは紙のため、後日、一部のデータ入力を行いますが、確認できる項目は少なく、タイムラグがあるため塗装担当者に的確なフィードバックも行えていませんでした。 この紙で行っている塗装検査を電子化し、出ている不具合の状態を系統的にまとめ、的確な情報をもとに、不良箇所を減らして、品質を高めるため戦略を立てたいと考えました。 そのためにはチェックシートを電子化する必要があります。紙に記入して、情報を電子化すると二度手間になりますので、まず紙を無くして、電子化して記録する。つまり、最初からデータ化することを考えました。 その電子化にあたり、パソコンでは持ち運びが不便で、携帯電話・スマートフォンでは小さすぎることから、タブレットの活用を考えました。また、タブレットにはカメラがついていますので、不良箇所や不良の状態を画像や映像として記録できる点もタブレットを選択した理由のひとつです。

 

「塗装検査を電子化し、データの蓄積を図りたいと考えました」と齋藤佑一氏

タブレットを活用した検査システムの実績でライトウェルに依頼

− 「チェックシートを電子化」するためのシステム開発会社はどのように選ばれたのですか。

最初、技術課で「タブレット 検査 システム」といったキーワードでインターネットを検索し、そのシステムやシステム開発会社の内容をチェックし、気になる会社については、電話でお話を聞かせてもらいました。 その中で、3社ほどに実際に来社していただき、より具体的な打ち合せをさせていただきました。その3社の中にライトウェルが入っていました。

 

 

− ライトウェルにシステム開発を依頼した理由を教えてください。

①タブレットによる検査システムの実績
既に当社ではピッキング作業でタブレット活用事例があり、SHIグループ他の事業部向けに、タブレットによる検査システムを開発した実績があることを評価しました。 また、建設現場などで使用されている通常の検査システムはYES・NO式のものが多いのですが、当社では画像に記入するかたちとしたかったため、同様の開発経験があることは有利であると考えました。

 

②住友重機械グルーフでの技術の共有化ができる
当社もライトウェルもともに住友重機械グルーブの一員ですので、グループとして技術の共有化ができることは、自社だけでなくグループ全体にとって有益であると考えました。

 

「開発実績に加え、グループでの技術共有化に着目しました」と渡邉芳輝氏

基幹システムと連動した検査記録システムの一環として開発

− 「塗装検査システム」の開発について教えてください。

検査システムでも画像をベースにしたものは少なく、当初、当社が想定している検査システムについての認識を共有することに時間を使いました。お互いのアイデアを元に意見交換し、要件定義後はスムーズに進み、約半年で、「塗装検査システム」を完成させることができました。 また、当初は単独システムとして計画していましたが、当社の基幹システムと連動した検査記録システムが既に「製品の性能検査工程」において運用されていました。 そこで「塗装検査システム」も「性能検査」同様に検査記録システムの一環として開発されることになり、基幹システムとの連携、そして最初から検査記録システムの中にデータを置くかたちで開発を行いました。

 

 

− 「塗装検査システム」を現在、どのようにお使いですか。

塗装検査システムとしては試験段階を経て、実際に運用できる段階になっています。ただ、先にお話したように、塗装検査の後、手直し塗装を行い、その後で再度塗装検査を行います。この最後の工程までをシステム化した上で、実際の運用は開始する予定です。 現在、こちらもライトウェルと一緒に開発を進めており、2016年秋には運用開始の予定です。

 

 

 

「次工程のシステム化を進め、2016年秋に本格運用」と伊達昌宏氏

検査をデータ化することで、時間・コスト削減につながる

− 「塗装検査システム」の評価を教えてください。

塗装検査を電子化し、結果をデータ化することで、ペーパーレス化やデータの再入力などのロスが少なくなることで検査の時間削減ができ、また塗装不良対策が進み、不良ロスが減れば、それに伴う人件費、工場の運用費、塗料などの材料費といった塗装工程すべてに導入効果として跳ね返ってくるものと考えています。

さらにデータの的確な分析が行えれば、改善のための地図を作成でき、最短距離で改善につながる道筋が見えるようになるでしょう。現在は、もとになるデータがありませんので、その地図が描けない状況なので、本格運用を非常に楽しみにしています。

 

− 「塗装検査システム」の今後の開発予定について教えてください。
 現在、塗装工程最後までの検査を電子化する開発を進めています。今後は蓄積したデータを分析出来る仕組みを開発し、手直し作業そのものを減らせるよう、塗装工程の品質改善に役立てていきたいとを考えています。
タブレットの画面に表示された画像にタッチして不具合の内容を入力。

次工程のシステム化と外観検査システムとしての発展性に期待

− ライトウェルへの期待、リクエストなどありましたら教えてください。

今回、一緒に開発した「塗装検査システム」は、外観検査という分野ではどこでも使えるシステムだと思います。当社の製品に道路機械がありますが、システムに登録してある画像を道路機械に変更するだけで、どんな製品の検査にも対応できるので、こちらでの展開も先々予定しています。

また、弊社製造工程では溶接の工程もあるのですが、溶接部位の外観検査として活用できると考えています。基本的に画像があって、その画像に対して、不具合をチェックし、記入していくものであればどんな製品にも使用できることでしょう。見た目を検査して記録するという面では、非常に汎用性が高く、モノづくりの会社であればどこでも使用できるシステムだと思います。
今後もライトウェルともに、このシステムをより使いやすいものにしていきたいと考えています。

  住友建機様と、弊社・藤(左)、川野・小澤(右)

 

住友建機様、本日はお忙しい中、

貴重なお話を有難うございました。

※取材日時:2016年4月